アクティブ?パッシブ?ダイレクトボックスDIの使い方・選び方
ダイレクトボックス、DIってよく聞くけど、どういったものかよくわかっていないという方も多いのではないでしょうか?
この記事では、ダイレクトボックスの用途、使い方など基本的なことを音響現場のエンジニアに教わった経験を交えて解説します。
用途・予算別に機材も紹介するので、ぜひ自分に必要なDIを見つけてください。
ダイレクトボックスの用途
ダイレクトボックスは主に以下の用途で使われます。
- 楽器等のハイインピーダンス信号をミキサーへ入力するため、ローインピーダンスに変換する。
- アンバランス信号をバランス信号に変換する。
どちらの用途も、目的はノイズを減らし、良い音質で信号を伝送することです。
それぞれ詳しく説明しますね。
インピーダンス変換
一般的に、入力側のインピーダンスは出力側のインピーダンスより大きくなくてはいけません。(いわゆるロー出しハイ受け)
ギターやキーボードなどの楽器から出力される信号はハイインピーダンス出力です。
ハイインピーダンス出力の信号をこのままミキサーへ入力すると、ノイズが乗ったりシャカシャカした音になったりと、正しく音声信号が伝送できていない状態になります。
しかし、楽器とミキサーの途中にDIを接続することでインピーダンスが変換されて正しく音声信号が伝送できるようになります。
お持ちのミキサーやオーディオインターフェースがハイインピーダンスを直接受けれることがあります。
その場合、インピーダンス変換のためのDIは不要です。
インピーダンスについては別記事でも詳しく説明していますので、参考にしてみてください。
バランス/アンバランス変換
もうひとつの用途として、アンバランス信号をノイズに強いバランス伝送に変換することができます。
特に長距離伝送を行なうには周囲にノイズ源が多数いるため、バランス伝送は必須です。
ライブハウスでは、ステージとミキサーのあるPAさんまでは距離がありますよね?
アンバランス信号のキーボードやベースからの出力ををステージ側でDIに接続するのはこういった理由からです。
接続方法
一般的なDIには以下の3種類の入出力があります。
- アンバランス入力(INPUT)
- アンバランス出力(THRU PARAなどの表記)
- バランス出力
接続コネクタの形はDIの種類によって異なりますが、大きくこの3種類が接続されているはずです。
接続方法は簡単で、図のように信号の流れの通りに接続しましょう。
楽器などのソース側を
①アンバランス入力へ接続
③バランス出力をミキサーへ接続
②の信号は①へ入力する信号をまったく何も変換せずにそのまま出力しています。
②の信号はアンプへ入力する場合に使います。
ここでDIが電源の必要なアクティブDIの場合、③に接続しているケーブルに対してミキサーから+48Vファンタム電源をかける場合もあります。
パッシブDIとアクティブDIの使い分け
DIには大きく2種類あり、
- 電源の必要なものがアクティブDI
- 電源が不要なものがパッシブDI
です。
アクティブDIの電源は、わかりやすく9V電池の場合もありますが、バランス出力するオーディオケーブルから+48Vファンタム電源を供給する場合もあります。
ファンタム電源対応のDIを持ち込みするときは、接続先(ミキサー)がファンタム電源を送れるものかどうかは確認しておきましょう。
ではこの2種類のDIはどのように使い分ければ良いのでしょうか?
基本的には入力側に接続する機器が電源が必要かどうかによって使い分けましょう
使い分けの基本的ルールは、
- 電源が必要なソースにはパッシブDI
- 電源が不要なソースにはアクティブDI
です。
要は、ミキサーに送るまでの経路のどこで信号を大きくするかなのです。
どこか1か所で電源を積んでいれば十分です。
例えばキーボードは電源が必要ですよね?
なので接続するのはパッシブDIになります。
次にベースやエレアコはどうでしょうか?
これらは電源が必要ない楽器なので、接続するDIはアクティブDIとなります。
こんな場合はどうなんだ?と思った方はお気軽にコメントやお問合せください。
予算別お勧めDI3選
ここではアクティブDIとパッシブDIのそれぞれ、予算別におすすめのDIを紹介します。
ぜひ自分に合ったDIを見つけてくださいね。
アクティブDI
- BEHRINGER / DI100
まずはDIを使ってみたいという方は一万円以下で買えるDI100がお勧めです。
基本的な機能は全て揃っているので、最近は結構使っている方も多い印象です。
- BOSS / DI-1
DIと言えばこれ!と言って良いくらい浸透しているド定番DIです。
ファンタム対応、GND LIFTなど基本的な機能は全て揃っています。
面白い機能としては、信号がなくなると自動的に電源をOFFしてくれる機能がついています。
手動での電源の入切が不要なので、電池交換の回数が減らせますね。
- RUPERT NEVE DESIGNS / RNDI
お値段が許す方はNEVEのRNDIをお勧めします。
RNDIにはスピーカーモードという機能がついていて、アンプからスピーカーへの出力を取り込むことができます。
つまり、アンプで色付けされた音をそのまま録音することができるんですね。
通常のDIではアンプを通らない信号が送られますので、アンプで音作りを重視している方には良い機能ですね。
パッシブDI
- ART/PDB
一万円以下で買えるパッシブDIだとPDBがお勧めです。
アッテネーター機能がついているので、楽器だけでなくラインレベルやスピーカーレベルも入力することができます。
音楽用途より、音響設備として取り入れている方も見かけますね。
- WHIRLWIND / IMP 2
IMP2はコンパクトで持ち運びに便利なDIです。
1~2万円で買えるDIとしてはコスパの高いDIとして有名です。
わずか200gと非常に軽いので、持ち運びが多い方は検討してみてはいかがでしょうか?
- RADIAL / JDI
RADIALはDIメーカーの中では世界トップクラスの企業です。
RADIALのDIを使っているアーティストも多く、また音響設備の世界でもよく見かけます。
DIを通すとどうしても音が変わってしまいますが、他社に比べて余計な色がつかないと評判のDIです。
まとめ
この記事ではDI(ダイレクトボックス)の使い方、選び方を紹介しました。
DI選びの基本的ルールは、
- 電源が必要なソースにはパッシブDI
- 電源が不要なソースにはアクティブDI
です。
オススメDIも紹介していますので、楽器屋さんで色々試して自分に合ったDIを見つけてくださいね。
この記事が誰かの参考になれば幸いです。
質問させてください。
Q1)
エレキギター(電源なし) → プリアンプ(電源あり) → DI(パッシブ)
で良いのでしょうか?
Q2)
(1) 電源が必要なソースにアクティブDI
(2) 電源が不要なソースにパッシブDI
とした場合、どんな問題が起こるのでしょうか?
コメントありがとうございます!
以下私なりの回答を。
Q1)パッシブで問題ないと思います。
補足として、プリアンプからの出力はラインレベルになっているはずなので、DTM用途などミキサーが近くにある場合はDIは無くても問題ありません。
ライブハウスなどで、プリアンプとミキサーとの距離が離れているようであればノイズ対策としてDIは有用かと思います。
Q2)
(1) 電源が必要なソースにアクティブDI
ソースの出力レベルが大きい場合、信号が歪んでしまう可能性があります。
とはいえ全くアクティブDIが使えないわけではありません。
記事でも紹介しているDI-1は、ATT機能がついていて、入力レベルが大きい場合は信号レベルを小さくすることができます。
(2) 電源が不要なソースにパッシブDI
出力インピーダンスの大きいエレキギターやエレキベースなどでは、信号レベルを十分に大きくすることができず良い音質を得ることができないかもしれません。
エレキギターやベースに使うDIはアクティブタイプで選んでおくことをオススメします。
ご丁寧なご説明、ありがとうございます。
とても良くわかりました。
どこかで「アクティブDIは、固定プリアンプ付きのパッシブDI」と表現されてましたが、
Q1)はまさにその通り、
Q2)(1) はプリアンプが2つなので歪んだり音質が変わったり、
Q2)(2)はプリアンプがないので信号レベルが小さくなったり、
といった話だと理解しました。
また、Q1)の補足は、嬉しい情報でした。
とても参考になりました。ありがとうございました!!