屋外イベントのクレーム対応
屋外におけるイベントで騒音の苦情が来ることは非常によくある話です。
せっかくの楽しいイベントが苦情のせいで音量を下げざるを得なくなり、小音量でイベントを行ったという話も聞きます。
この記事では、屋外イベントを主催する側が気をつけるべき指標や対策を紹介します。
大型イベントだけでなく、地域で開催するイベントにも使える知識ですのでぜひ参考にしてください。
どんなイベントが対象?
ずばり屋外イベントに関する音量の規制というものはありません。
ヨーロッパでは基準があったりするそうですが、日本では特に規制はありません。
法的な規制がないのならいくらでも音を出してもいいのか、というとそういうわけでもありません。
日本では拡声機に関わる騒音規制があり、屋外イベントについてはこの拡声機の騒音規制で考えられることがほとんどです。
代表的なイベントとしては以下のようなものが考えられます。
- 屋外コンサート
- 屋外展示施設
- 花火大会
地域の夏祭りなど、地域のイベントは例外的にこの規制から除外されている場合があります。
自治体主催ではないイベントについては、ほとんど対象と考えて間違い無いです。
クレームはどこから?
9割型近隣の住民や近隣で働く人たちからのクレームです。
その場を通りかかった人たちからクレームが来ることはほぼありません。
長期的にその地域に滞在している人が日常と違う状況に耐えきれなくなり、クレームになるというケースがほとんどです。
騒音に対するクレームはイベント主催側に直接入ることもあれば、自治体に入ることもあります。
こういったクレームが入ってしまうと、いくら音量を下げて規制をクリアしたからといって収まる問題ではなくなってしまうこともあります。
なので、イベント企画時からクレームが入らないような音の設計をしておきましょう。
法的な規制
屋外イベントに関わらず、騒音に対する規制は県や市などの条例によって全然違います。
東京でイベントをやっているのに、北海道では問題なかったから大丈夫という理論は通用しません。
なので、イベントを行う地域の規制をまず調べるところから始めましょう。
条例
基本的には条例を調べることでその地域の規制基準を確認することができます。
条例を1文ずつ見て確認するのは日が暮れてしまいます。
おすすめはGoogle検索で「自分の地域 騒音」と検索することです。
この時自分の地域は都道府県ではなく、市区町村単位で調べましょう。
条例は市区町村ごとに細かく分かれていることもあるので、隣町ではOKでも自分の町ではNGという場合もああります。
例えば大阪市でイベントをするから規制を調べようといった場合、「大阪市 騒音」と検索すれば市区町村のホームページの該当ページがヒットします。
横浜市の場合
例として横浜市の場合を見てみましょう。
Googleで「横浜市 騒音」で検索します。
このように上位に市の公式ホームページがヒットします。
用途地域
騒音の規制基準についてのページを見ると、用途地域によって規制の基準値が違います。
用途地域というのは、その地域が住宅地なのか商業施設の地域なのかといったように、地域を用途によって区分分けしたものです。
調べたい地域の用途地域は用途地域マップなどで調べることができます。
規制の時間帯
また時間帯によっても規制値の値が違います。
例えば商業地域を見てみると、日中は65dBまで許容されるのに対し、夜間は60dBとなっています。
日中は規制が緩く、夜間は規制が厳しいことがわかります。
これは夜間の方が通常時が静かで、かつ夜間の方が音が遠くに飛んで行きやすいためです。
1日中音を出し続ける屋外施設の場合は、夜の基準で計画しましょう。
規制値はどこでの測定値なのか?
規制値のデシベルはいったいどこで測ったものを参考にすべきでしょうか。
これは多くの場合、敷地境界線上で測定した値となっています。
言い換えれば、イベントの客席ど真ん中で90dB近くの音量を出していても、敷地境界線上で60dBにまで低減させることで規制はクリアです。
測定方法
イベントで音量が一定ってことは基本的に無いですよね。
では、いったいどの時の音量を測ればいいのでしょうか。
騒音の測り方には最大値や平均値などさまざまな測定方法があります。
イベントにもよりますが、
拡声機騒音に対しては時間率騒音レベルL5で測定することが多いです。
イベントで使う音源を事前に再生し、
- A特性
- FAST
- L5
の設定で測定するようにしましょう。
その値が基準以下になっていればOKです。
詳しい測定の仕方については以下記事を参考にしてくださいね。
対策
イベントの規制値についてはわかったけど、単純に音量を規制値まで下げるしかないの?と思う方もいると思います。
単純に音量を下げるだけだとイベントの迫力がなくなってしまい、台無しになってしまうパターンもあります。
ここではそうならないために、いくつか対策手法を紹介します。
技術的対策
先ほども説明しましたが、規制値は多くの場合敷地境界線上で守る値です。
つまりイベントを楽しみに来ている人たちに対しては迫力のある音量で再生し、その音が敷地境界線の位置では静かになるようにすれば良いのです。
まずは迫力のある音を聞かせたいエリアを絞りましょう。
スピーカーの配置は、エリアに向けたアレイスピーカーを使ったり、向きをそのエリアの内側へ向けるなどして敷地の外に向かって音が出にくいような配置を計画します。
また、規制値はA特性での測定値のため、低音はある程度出しても測定値には反映されにくいといった特徴があります。
出しすぎには注意ですが、低音で迫力を演出するようサブウーファーを活用するのも良いでしょう。
社会的対策
騒音対策として一番有効と言われている手法が、近隣と仲良くすることです。
例えば、マンションの上の階で子供の足音が響いてくるといった場合、以下2つの状況の時どちらが不快に感じますか?
- 自分と上の階の住人の顔も名前も知らない場合
- 上の階の子供のことはよく知っていて、普段から挨拶をする仲の場合
ほとんどの人は1のパターンの方が不快に感じるはずです。
このように同じ騒音に対してでも、状況によって人の感じ方は大きく変わります。
屋外イベントにおいて、クレームの発生源はほとんどが近隣住人です。
近隣住人にあらかじめ説明会を設けるなどして理解を得られる努力を継続的に行って行くことが、クレームを抑える最も効果的な方法だと思います。
まとめ
この記事では屋外イベントでの騒音規制の調べ方、測定方法、対策について解説しました。
屋外イベントを企画する時は、以下のように計画を立てて進めるようにしましょう。
1.イベントを行う地域の騒音規制について、市のホームページで調べる
2.規制値を満たすようなスピーカー配置を検討する
3.近隣へのフォローを必ず入れておく
役所に行けば環境担当の課があるはずです。
計画段階で役所に相談に行くのも良いと思います。
地域によっては、無料で騒音計の貸し出しもやっていたりするので、活用してみると良いですよ。
自分たちが良ければいいやではなく、関係ない人たちに対しても配慮してwin-winな音響計画をしていきましょう。