【導入事例】病院の待合室のBGM環境構築
施設の中でのBGMは、聴いている人をリラックスさせたり、満足度を高めたりする効果があるのはよく知られています。
お客様に快適な時間を過ごしてもらうには、より良い音環境で聴いてもらえることが重要になります。
今回、ココナラを通じて浦和駅ユーカリ耳鼻咽喉科様より「病院の待合室の音響システムについて相談したい」という依頼を受けました。
この記事では、その依頼に対する提案内容と実際の構築プロセスについて紹介します。
クライアント紹介とプロジェクト概要
今年の6月に埼玉県浦和に新規開業された浦和駅ユーカリ耳鼻咽喉科様より音響機材の設置方法についてご相談がありました。
10坪ほどの待合室に天井埋込スピーカーを設置し、良い音で待合室に音楽を流したいとのことでした。
スピーカーは院長様のこだわりで手持ちのタンノイ製スピーカーを選定されていました。
耳鼻科クリニックに来る患者さんは耳が悪くキンキンした音で不快感を持つ人もおり、院内ではクラシック系の音楽も流したいため、やさしい音がしそうなタンノイを選定されたとのことです。
今回は内装新築工事なので、内装工事業者に取り付けてもらうことになるが、取り付け方法をどのように指示しておけばよいかアドバイスいただきたいとのことでした。
今回音響デザイン教室では、スピーカーケーブルの選定・設定方法、取り付け工事にあたっての注意点などアドバイスさせていただきました。
要件の整理と確認
まずは接続機器を確認し、どういった接続が最適か検討します。
クライアントの要望・要件も確認した上で提案をさせていただきました。
提案内容
スピーカーの接続方式
通常館内のBGM再生にはハイインピーダンス接続が多く使用されます。
これは少ないアンプのチャンネル数で、数多くのスピーカーを鳴らせるという大きなメリットがあるためです。
しかし、デメリットとして音質面、特に低音域が犠牲になってしまいます。
今回選定されていたスピーカーはスピーカーのインピーダンスが16Ωと比較的高いインピーダンスのものでした。
4台を並列に繋いだとしても、総合インピーダンスは4Ωとなり、アンプの対応インピーダンスの範囲となりました。
そのため、今回は音質面で有利なローインピーダンス接続を提案させていただきました。
スピーカーインピーダンスについての詳しい説明は以下の記事も参考にしてください。
スピーカーケーブル
ハイインピーダンス接続の設備スピーカーでは、安価なAE線などが電気工事業者さんで選定される場合がほとんどです。
今回ローインピーダンス接続でのシステムなので、スピーカーケーブルの標準品カナレの4S6を提案させていただきました。
配線距離が長ければさらに芯線の太い4S8などもラインナップにあるのですが、今回の場合は4S6で十分と判断しました。
サウンドハウスさんであれば切り売りで必要なメートル数だけ手に入りますので、入手も簡単です。
その他設置にあたっての注意点
スピーカーが設置可能かの確認
今回使用されるスピーカーは奥行き205mmとそこそこの大きさがあります。
設置予定箇所の天井裏のスペースに余裕があるかは工事業者と事前に確認していただきました。
天井埋込型スピーカーの失敗例だと、天井に穴を開けてから梁があることに気づき、スピーカーが入らないことがわかったりすることもあります。
そうなると天井の施工ごとやり直しになるので天井埋込スピーカーを選定される際は要注意です。
落下防止措置
地震時にスピーカーが落下し、お客さんの頭上に落下させない措置として落下防止ワイヤーの設置も提案させていただきました。
待合室は常に人がいることが想像されます。
こういった空間では落下の危険があるものには落下防止措置をしておくことをお勧めします。
導入時のトラブル
工事自体は順調に進み、スピーカーの取り付け工事もトラブルなく完了との報告をいただきました。
内装工事終了後、ご自身でスピーカーケーブルをミキサーアンプと接続したものの、音が出ないというトラブルが発生しました。
接続の様子を写真で送っていただき、トラブルシューティングに当たりました。
ミキサーアンプと接続されているスピーカーケーブルを見ると、4芯あるはずのスピーカーケーブルですが、2芯しか接続されていませんでした。
使われていない2芯をミキサーアンプに接続してもらうと、無事音が出るようになりました。
どうやらスピーカー側でも2芯しか接続されていなかったようです。
4S6を使用する場合、4芯のうち、赤と赤透明のペア、白と白透明のペアで捻って2芯とし接続することが多いです。
これで解決かと思いきや、4台接続しているスピーカーの内、音が出たのは1台だけだったとのことです。
シーリングスピーカーのグリルを開けてもらい、ダイヤルスイッチを確認してもらうと音の鳴っていない3台はOFFになっていました。
ダイヤルスイッチをLoZ(ローインピーダンス接続)に設定したところ、無事全てのスピーカーから音が出るようになりました。
シーリングスピーカーは本体にダイヤルスイッチやディップスイッチがあり、ハイインピーダンス接続やローインピーダンス接続を切り替えられるようになっています。
ここは必ず今繋いでいる方式に適した設定に変更しましょう!
導入の効果とお客様の声
いざ鳴ってくれた音は、音量が小さくても大きくてもしっかり鳴りながら、柔らかい音で、期待した通りの結果とのことでした。
院長さんは音が出るようになった日は誰もいない夜の待合室で、オーディオコンサートをしてしまったそうです。
こだわりがあった分、音が出るようになった時の感動は想像できます。
お近くの方は、オーディオに少しこだわった耳に優しい待合室を体感しに足を運んでみてはいかがでしょうか。
オーディオ好きな方は院長先生とも話が合うかもしれませんね。
オマケ:館内BGMの著作権についての小話
通常、館内BGMは自由に好きな音楽を流すことはできません。
それは著作権やその他の権利が絡んでいるためで、正しい申請や正しい再生方法などの手順を踏む必要があります。
そのため、日本のほとんどの館内BGMはUSENなどの権利関係がクリアになったプラットフォームを利用することがほとんどです。
しかし医療施設(医療法・介護保険法に基づく施設)での利用においては、JASRACへの許諾手続きが不要となります。
そのため、一般の施設に比べて医療機関の場合は自由度高くBGMを選定することができます。
オーディオ好きな医療機関の方は一度院内のBGMについても検討してみてはいかがでしょうか?
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型番や写真などがあれば今回のようにトラブルシューティングのお手伝いをすることも可能です。
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ココナラにもサービスを出品しておりますので、ぜひそちらも参考にしてみてください。
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